フォースの覚醒について-3

ハン・ソロについて
オリジナルと今回のシークエルを繋ぐ役目を文字通り命がけで果たす。今作のハンは見かけは十分に加齢しているものの性質はほとんど変わっていないという設定。密輸船でのアクションシーンではハリソン一流のもっさい走り方とパンチを披露し「ん、これ何の宝探し映画だったか」と思ったりも。話は逸れるがこの辺りはさすがのJJなのだろうなと。JJはスピルバーグのフォロアーでもあり『SUPER8』ではスピルバーグの作品世界を緻密に模倣・再構築していながらしっかりと良作たらしめている。だからハリソン・フォードという素材があればアレの要素も入れたくなるだろう。そういえばプリクエルを製作するにあたってジョージは盟友のスピルバーグに監督をオファーして断られたというエピソードがある。くだらない妄想になるが、この『フォースの覚醒』は実現しなかった「スピルバーグのSW」を間接的にJJがしてのけたと考えるとちょっと面白い。

今作ではハンとフィンの絡みが多くて、これは継承の意味があると思っている。フィンもまたブレるキャラクターであり大義よりも情で動くタイプであるので(現状では)、シークエルにおけるハンの役どころを担っていくことになると考えていい。

そして息子と対峙する問題のシーン。あの時のハンの心境としてはどうだったか。カイロはすでに父親の存在を感じていたのでいわばおびき出された格好だが、ハンは覚悟があったものの声を掛けるまでに逡巡があった。この辺はJJにしては珍しいタメの演出でもあるがハンの性格を考えると理解できる。久しぶりに会った息子は変わり果てていて言葉を交わすものの噛み合わずに衝撃の結末に至る。驚きの後でこの運命を受け入れたように見えたハンは優しく息子の頬をなでつつ橋から落ちていくのだが、この振る舞いにカイロはベンの部分を思い出したのだろう。動揺の中でチューイの射撃をモロに受け、その後の戦闘でも影響してしまうことになる。結果的にハンは若者たちを救ったと言えなくもない。こうして父親となったハンを見せていなければ「オリジナルの焼き直し」との誹りは避けられないところだが、やるべきことはやっているのだ。そして父親になったが父親が分かっていないというのはハンの出自を考えると悲しくもある。この辺りの父親不在というのもスピルバーグ節と言えそう。

ところでタコダナでの戦闘シーンでハンがノールックで射撃するシーンがあるがあれは何だろう。おそらくはアドリブだろうが実は息子のベンにいいところを見せようとしてフォースの訓練をしていた過去があったとか考えるのも面白い。彼はどんな父親になろうとしていたのだろうか。

レイアについて
レイアの描かれ方もまたハンと同様で相変わらず。平時では役に立たないと夫であるハンを断ずるセリフがあったが、実際のところ似た者同士なのだと思う。
彼女についてはあまり思うところがない。ハンを送るときのキャリーの演技は完全に「死に別れる」ものだったのには苦笑するよりない。ちなみにレイアがレイを迎えるシーンでチューイを無視してしまったのは要するにEP4でメダルを贈らなかったことと同じなんだよ。悪い冗談。

ルークについて
今作は冒頭から常にルークの影を感じつつ物語が進んでいく。そうしてあのラストに繋がるわけだがマークの容姿にがっかりした向きも多いと聞いている。個人的にはあのやさぐれ感がルークの苦悩を表していると考えているので気にならないのだが。

あれから30年、ルークに何があったのかは断片的に語られた。彼もまた相変わらずなのか、ジェダイオーダーの再興に失敗しナイーブな対応をみせている。まあ「ジェダイは隠遁するもの」ではあるので当然の帰結なのだろうが。続編でどのように描かれるかは楽しみだけど基本的に「Master must die」のSW世界だからきっとそうなるだろう。

📷 In the home stretch. (via Rian Johnson)

Star Wars Moviesさん(@starwarsmovies)が投稿した写真 –


すでに追い込み中というEP8の撮影の報告に彼のローブが公開されているが、これを見た瞬間に「ああ‥」と思わずにはいられなかった。

ちょっと面白いのはレイがルークに会いに行くのにミレニアム・ファルコンで向かうのだけど、同乗するのはルークと旧知のチューイとR2だけでなぜか3POは外れている。これは3POが今後不要であると示唆しているのだろう。レイが複数の言語に精通しているという設定はやはりそのためか。そしてやはりR2にはレイアのホログラムが託されているのか‥?

チューバッカについて
今作の「Noooooo!」はコイツが担うことに。上手いなと思った。
今作はチューイのスキルが活かされていてとても楽しかった。怪力でタフ、ベテランパイロットであり寒冷地にも適正(寒がってはいたが)を見せる。今回は感情の部分での描写も多く、盟友を失った際の叫びは痛切だったし、その後の怒りと悲しみの爆弾スイッチONの力感、そしてレイとフィンを救い出すシークエンスの頼もしさ。スターキラー基地でレイと再会した際には「助けに来たのはそいつ(フィン)のアイデアだぜ」と言ってあげる気の利きよう。ルークの元へ向かう際のレイに向けた表情とかも素晴らしく、JJ達はチューイのポテンシャルをうまく解釈したなと感じた。

彼がシークエルを通じてレイのパートナーであるのか、それともあの位置にフィンが昇格するのかは気になるところではある。

ポー・ダメロンについて
ポーはエースパイロットであり語り口も軽妙、組織に忠実で義に厚いというモテるしかないキャラクター。こういうベタな造形はジョージが最も嫌うところではないだろうか。演じているオスカー・アイザックは『ドライヴ』でのダメ男ぶりが印象深いので今作の演技にちょっと驚いた。予告編で「ああコイツはダークサイドに堕ちるんだ」と思い込んでしまっていたので。

彼があの墜落で死んではおらず、タコダナで見事なドッグファイトを繰り広げるわけだがやや違和感はあった。後になってわかったのは元々ポーは死ぬ予定だったという。今後も活躍しそうではあるがそれはおそらくEP9でのことだろう。

キャプテン・ファズマについて
なんで限定パンフレットの表紙がお前なんだ?ということは言っておきたい。
主要キャラと目されながら今作では驚くほどに活躍しなかったファズマだが、フィンとの因縁は生じている。それを拾い上げるのかどうか。個人的にはあの失態からファーストオーダーを追われバウンティハンターに身をやつすというシナリオがある。そしてもちろん“裏切り者”を追い続けることになる。

マズ・カナタについて
マズは長命の種族(?)で語り部という役割。ヨーダとも面識があった設定ではないか。気になるのはあの酒場でレイが去ろうとするフィンを追いかけて席を立った後に、ハンに向かって「どういう娘なんだい」と訊くシーン。それに対してハンがどう答えたかが興味深い。そこで交わされた会話の後でレイは地下に導かれ、スカイウォーカーのライトセーバーを手にすることになる。これはマズのフォースが関与していると考えるのが自然。

またマズがフィンの目を見て「逃げる者の目」と断ずるシーンがあるがあれはハンに向けた言葉でもあるだろう。そして最終的に逃げなかったフィンにライトセーバーを渡すのだが、もしフィンが「”Finn”(Lando Calrissian’s Son)」なのであれば、ベスピンで失われたあのライトセーバーをマズに渡したのはランドかもしれないので面白い構図なのかも。

Category: culture, memo

Date posted:2016-06-16

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